下の子が、これまで自分がした悪いことを、家族みんなに知らせてあやまるのを流行らせています。
目がはなせるくらい大きくなってからでも、親が注意したくなることをしているのがよくわかります。
子どもはなんの実験なのか、思わぬことをする、そういう好奇心は自然……。
一方、人見知り、場所見知り、といった言葉があるように、子どもは見慣れないものが苦手です。
新しいものと慣れたもののバランスってどうなっているのか?
人間に共通する、興味深いデータがあります。
「新しいもの」と「これまでで一番いいもの」、成功するのはどちら?
「新しいもの」と「これまでで一番いいもの」の、どちらを選ぶのがいいと思いますか?
子どももそうですが、人は新しいものが好き。一方、慣れ親しんだものも好き。
ここで問題です。
一度も試したものがない「新しい」ものと、10回中7回成功したものだと、どちらを選ぶのがいいと思いますか?
数学的に考えると……
7割の成功率を誇るものより、全く新しいものに賭けるほうが、当たる確率が高くなるんだそうです。
特に、今も未来もほぼ同じであると考えると、全く新しい知らないもの……偶然に賭ける価値はさらに高くなります。
でも、今も未来もほぼ同じなのかといえば、そんなことはないはずですよね。
例えばもうすぐ引っ越すのなら、今の街で新しいお店を選んで食事をするよりは、「美味しい」と知っているなじみのお店にいくほうが、「成功する」可能性は高くなるわけです。
が、ずっとそこに住むのなら、次々新しいものを試していく、探索の段階はあっていい。
その探索には、その後、結果を「活用」していく段階が続くわけだから……。
偶然性にかけるのも、合理的なあり方です。
「新しいもの」から「慣れたもの」へと移行するタイミング
「次々試していく」という時に、どれくらい試せばいいか、という問題設定もあります。
その場合、キーになる数字は、37パーセントなんだそうです。
例えば、引っ越し先の物件を探すとします。
部屋探しに1カ月かけるとしたら、37パーセント……つまり最初の11日間まではただ見て、そこから先は、それまでで一番いい物件を即座に選ぶといいそうです。
そうすることが最良の選び方で、それで成功する確率も37パーセント(選択時も成功時も、どちらも37なんです)。
えっ。つまり失敗が63パーセント!?
とはいえ、何かの目安にはなりますよね。
期間が限られる時に、一番いいものを選びたくて、迷うようなら、37パーセントまではただ見て、そのあと一番いいと思ったものに飛びつけばいいのです。
「後悔先に立たず」も真
……でも、63パーセント失敗すると想定されるもののために、目の前の物件を素通りするのはふつうに迷う。
そこに、「後悔」という変数を入れると、計算結果も変わるそうです。
神様じゃないので、「一番いい選択」なんてできない。
常に後悔はあるから、その総量を減らすというベクトルで考えます。
後悔基準で「一番いいもの」を選んでいると、それ以外の戦略を選んだ場合よりも、後悔が増えるペースも蓄積するペースも遅くなるそうです。
つまり、後悔最小化をめざせば、年を追うごとに、前の年よりも後悔が減る。という数学的事態がありうるわけですね。
何才まで新しいものを追うのが一番いい?
ここで、条件をとても単純化して、人間の人生に当てはめて考えてみると、37パーセントの成功のために、何歳まで探索を続けるか、という問いもあり得ます。
子どものうちは次々新しいものを試す、そのほうが合理的、というのはわかる。
まー小さい子はちっともじっとしてませんし、赤ちゃんはなんでも口に入れますしねぇ!
横で見ている大人は、すでに試したものを活用する段階に入っているので、ハラハラする。
親の探索の知見を生かしてほしいと願いつつ、子どもの「後悔」が最小化されるように、37パーセント以上も許容することになるわけですねー。
じゃあ、いつまで子ども? いつまで探索段階?
人生、80年生きるとすると、37%の成功のために次々試すに値するのは、何歳までかを単純計算します。
29歳6ヶ月。あ、30歳前の妙齢になってしまいます。
Don’t trust over Thirtyってこと?
じゃあ、30以降は、活用ばかりなの? 新規なし? つまんなさそう……
ここで、条件に「後悔最小化」を入れてみると、いろいろ試した結果をもとに、新しいそれが、「どのくらい良いものとなり得るか」に注目することになります。
楽観性による選択、となるわけです。
たとえ失敗してもこれを選ばないと後悔する、と感じ、楽観的に飛び込むことができるのなら、やって失敗するほうが、やらなくて後悔するより、30過ぎてもリスクが少ないかもしれないです。
残り時間を設定し直すと、老人も若者もない
ちなみに、老人のほうが頭が硬いと思われがちですが、残り時間に対し最適化する、という合理的な選択からそれが行われているからであり、残り時間がのびるという条件をつければ、老人も、若者と同様の選択傾向を示すのだそうです。
つまり、寿命があと20年伸びるなら、若者と同じくらい「探索をする」ことを選ぶ、老人が増えるんですって。
『だってだってのおばあさん』ですね!? だって私5歳だもの。という……
いつから老人? 少なくとも還暦過ぎてもまだ老人じゃない……という現代では、大人もバランスよく「探索」を入れていかないと、たぶんツマンナイし、数学的な最適解でもないようです^^
【参考文献】
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