食材・調味料

農薬研究者にきいた食べ物の安全の話

農薬研究者にきいた食べ物の安全の話

食べ物の安全の話を、農薬の研究者にヒアリングしました。

メルマガで数ヶ月前に配信しましたが、ご興味おありの方も多いと思うので、一部転載します。

なかなか更新できないブログと違い、メルマガは週1配信をきちんと続けています。
解除率が凄まじく低いのが自慢です。

読み応えはありますからね!(自画自賛・笑)

メルマガでしか書かない内容も多いので、ご興味おありの方は、この文章の最後に登録フォームがありますので、よければご登録くださいね。

自然な育児を心がける母親が、農薬の研究者に話を聞く理由

さて、まずは、なぜ、あえて農薬の研究者さんに食べ物の安全についてたずねるのか?というところから。

一般に、安全=無農薬のほうが、しっくりきますよね。

食べ物の安全性を語る方向性は、2種あると思っています。

一つは
(1) 添加物や残留農薬に警鐘を鳴らす方向性

みなさんお心当たりがおありなのでは? もう一つは、

(2) 警鐘を鳴らす論調に煽られて「フードファディズム」に陥りがちな消費者を、科学者が諭す方向性

例えば以下のような本が (2) に当たります。

フードファディズムとは、

食べものや栄養が健康と病気に与える影響を、熱狂的、あるいは過大に信じること、科学が立証したことに関係なく食べものや栄養が与える影響を過大に評価することである。例えば、マスコミで流されたり書籍・雑誌に書かれている「この食品を摂取すると健康になる」「この食品を口にすると病気になる」「あの種の食品は体に悪い」などというような情報を信じて、バランスを欠いた偏執的で異常な食行動をとること。

Wikipediaより

センセーショナルに取り上げられやすいのは、当然 そのフードファディズムに寄ったもの です。

私含め、このメルマガ読んでいる方の中にも、オーガニック(は、日本の場合「無農薬」の意味じゃないですけど)なもののほうがいいな、と思っている方が多いんじゃないでしょうか。

でも、だからこそ、フードファディズムだと言われないよう、また、お手当てメイン、お薬避けて子育てしている親の責任感として(笑)、(2)の立場にある本も、たまには読むようにしています。

今回、農薬の研究者さんと話していると、新聞社向けに農薬の説明会を開いたとしても、面白いくらい (1) の観点に持って行かれてしまい、正確に伝わった試しがない、と言っていました。

ちょっと注意しないと、実際、読者受けのいい論調に持っていくのが、マスコミの読者サービスでもありますし、商売が関わってくる場合、売り手の論理もあるでしょうから、そこは自分でもリテラシーを磨く努力はしないとね、と思います。

農薬研究者さんにとっての「無農薬野菜」とは

もちろん、「科学的に立証されていることがすべて」だと私は思っていません。

科学的に立証されていないから、鍼灸に効果はない、ですとか、経絡は存在しない、ですとか、私は考えませんから^^。

という前提に立ちつつ、農薬研究者さんと話した「無農薬野菜」について書いていきますね。

いま、その研究者さんは、虫食いだらけのナスとかきゅうりとかそんなのばっかり持ち帰って食べているんですって。

そういう野菜は「無農薬」です。

農薬について研究するためには野菜を育てるわけですが、比較するために、同じ野菜について、必ず一定数、無農薬野菜も育てるそうです。

そして、無農薬のものが虫食いだらけになっていて、それを家庭に持ち帰っているそうです。

「虫食いでも無農薬の方がいい」と思って、あえて選んで持って帰っているわけではありません。

地域に向けて販売できないから無料というのが一つ。
あとは素朴に、「せっかく育てたのに勿体無い」のだろうと予想します。

農薬の研究をしている人は、その野菜に使われている農薬の安全性やリスクを理解しています。

研究者としては、その作物への影響を複数世代にわたって調べているそうで、残留していない、変異していないことは数字で頭に入っているわけですね。

だから、農薬を使っているのが気持ち悪い、的な論調ではないわけです。

一方、植物が食害を受けた時に、防御物質をつくりだすから「農薬を使っていない農作物は、病害虫の食害などを受けて体内でヒトに有害な物質を作りだしている可能性がある」という指摘もあります。

上に書いた、『お母さんのための「食の安全」教室』で読みました。

専門家は、食害抵抗性が気になるから、農薬を使用した野菜のほうがいいと思わないのかな。

と、思って素朴に聞いてみたら、結局、食害を受けることですごく増える化学物質が幾つかあるのは事実で、その物質が虫や病原菌に害をなすのは確かだけれど、それが「どれくらい人間への害があるかは不明」なんだそうです。

化学物質が100倍、200倍増えてるような野菜は、(悪影響はわからないけれども)食べないけど、まあ自分たちで作ったものだし、害があるとも言えないから、虫食い無農薬野菜を持ち帰って食べているとのことでした。

農薬は使ってないに越したことはない、でも、使っているから危ないとは思わない、というのが、その方の基本ライン。

何もやってなくて何も食われてないやつがベスト」だそうです。

農薬研究者にとっての「無農薬・無施肥(自然栽培)野菜」

ほお。それを聞くと自然栽培がベストになるのかな、と、私は思いました。

自然栽培の文脈だと、虫に食われる野菜はそもそも弱い(その野菜本来の栄養を持っていない)、と言われがちです。

でも、その論点も、科学的には成立しづらいそうです。

以下の文章、どちらもよく見ますけど、どちらが正しいと思われますか?

1 虫に食われる野菜は弱い
2 虫がたくさん寄ってくるくらいその野菜は栄養いっぱい

研究者の回答では、どちらも正しいとは言えないそうです。

1に対しては、2の観点から反論できるそうですが、その場合の2の「栄養」とは、「何を持って栄養と取るのか」によって変わるそうです。

その栄養が「窒素」なら、虫が寄ってくる栄養らしいので成立するらしいけれど、窒素って、私たちが思う「栄養」じゃないですよね(笑)。

窒素が多いって、肥料が多すぎってことかしら。
それは自然栽培のほうが、確かに窒素過多には、なりづらいに違いない。

でも、「強いから」「栄養があるから」という、自然栽培の優位が成立しなくなってしまいます(笑)

話していると、いちいち言葉で引っかかるので、やっぱこういうのは面白いです。

農薬研究者にとっての「発芽玄米」

その農薬研究者さん玄米食なんですけど、ついでに発芽玄米の話題になりました。

発芽玄米については調べたことないらしいですけど、大麦の発芽については調べたことがあるそうです。

発芽する時って、わからない物質も含め、本当にいっぱい出るそうです。

活性があって、何かわからないものが大量に出ている点において、発芽玄米ばかり食べるのがいいとは思えない、とのことでした。

健康にいい物質も出ているかもしれない、でも、何か害のある物質が出ているかもしれないから、食べ過ぎたらよくない可能性がある。

酵素玄米なら、もう何十年か食べて健康に害を受けていない人もたくさんいるから、大丈夫なんじゃないかと思う、とのこと~。
これはその人が調べたわけではなく、人体実験の結果はある程度出てるよね、という意味です。

農薬研究者にとっての「食べ物の安全」

まとめると、その食品が、健康にいいのか悪いのかは、大体量による

基本的には科学者は「わからないものが多いから偏って食べないように。広く満遍なく食べましょう」というはずだ、と言ってました。

なるほど、確かにみなさんそう言ってます。

国立健康・栄養研究所のサイトにある、「『 健康食品 』の安全性・有効性情報」にも、「健やかで心豊かな生活を送るためにはバランスのとれた食生活が何より重要です」と、まさに冒頭に書かれています。

上記の「安全性・有効性情報」、論文や書籍など文献を大量にあたって、評価されています。

下のリンクですが、
https://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv.html
高額サプリメントの原材料にもなる、気になるあのスーパーフードの、人への有効性が科学的に立証されていない話ばかりで面白いですよ。

農薬研究者にとっての「野菜の美味しさ」

「有機野菜は美味しい」と私は思っているのですが、それもその人に聞いてみると、糖分(美味しさの指標ですね、確かに)は、有機栽培しても増えないそうです。

あら、それすら農薬使用の有無とは科学的にリンクしないのか。

だってスーパーの野菜は苦いじゃないですか?といった質問を投げかけると、作り方が大きいんだそうです。

その作り手がうまく作るか、作らないか。

急いで大きくしようとすると味のノリが悪くなる。
場所もある、土もある。
同じ人が違う土で作った場合、美味しく作れるわけでもないそうです。

だから、生産者をチェックしておくのはいいんですって。

農薬を使っていても使ってなくても、生産者の名前をチェックして、美味しいと思った人の名前を覚えておいたら、その人の野菜は次も美味しい可能性が高いよ、とのことでした。
なるほど^^

有機あるいは無農薬野菜でも、おいしくないものはあると常々思っていたので、これからはファームや個人名に注目して買おうと思います。

 望月 索 ☆ 
自分に“ちょうどいい”から気持ちいい。
らくなちゅらるライフプランナー

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執筆者について

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本やムックの編集者、時々ライター、一般社団法人 日本マクロヘルス協会理事。3人の子を育てる高齢出産ワーキングマザー。編著に『子どもを守る自然な手当て』、企画・翻訳書に『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』『親子で楽しむ おむつなし育児』など。大人向けのノンフィクションや小説、実用書、児童文学、絵本など、多くの出版物を編集・製作中。趣味はマンガ読み。

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