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織姫と彦星のいない七夕まつり:古くて新しい五節句の民俗絵本♪

織姫と彦星のいない七夕まつり:古くて新しい五節句の民俗絵本♪

七夕といえば織姫と彦星だと思っていたら、どこまでいってもそれはない。

「昔の日本で、生活に密着した七夕ってこんなかんじだったんだ」「五節句としてのたなばたってこんな感じ?」と思える、とても素敵な内容の絵本を、かいつまんでご紹介します。

 

『たなばたまつり』ってどんな絵本?

この写真は、1970年7月1日初版発行の「普及版こどものとも 7 たなばたまつり」(福音館書店)です。

1997年にハードカバーの絵本が出たようなので、図書館でおいてあるところもあるかと思います。

著者の熊谷元一(くまがい もといち)さんは、明治42(1909)年生まれ、小学校入学が大正5(1916)年、小学校を終えたのが大正11(1922)年。

長野県下伊那郡阿智村を写真に撮ったり絵本に描いたりされているらしく、写真童画館があります。

熊谷さんが育った頃が題材の絵本だと考えると、今からほぼ100年前の、長野県の七夕、ということになりますね。

あるいは下の写真文庫によると、熊谷さんは教師をされていたようなので、もう少しあと、1950年代……70年くらいむかしの子どもたちの様子なのかもしれません。

いずれにせよ、昔の七夕。

阿智村って、日本一星がきれいなところといわれているらしく、その村の「たなばたまつり」となると、とても風情があります。

(現在品切れなのがもったいない絵本です……)

 

「たなばたまつり」が六日の朝から始まる

六日の朝、里芋の葉っぱにたまった朝露をとりにいきます。

その朝露を、すずりに入れて墨をすり、たんざくを書くのです。

たんざくには、「あまの川」「星まつり」といった単語も書きますが、「うたがじょうずになりますように」といったねがいごとも書きます。

 

朝露で何かをする、というのが、季節行事にはよくあります。

お正月の行事で朝一番の水を利用するものもあれば、重陽の節句(9月9日)で「着せ綿」に含ませるのも朝露。

着せ綿とは、節句の前夜に菊の花の上に綿をのせて、朝露が含まれた綿でからだを拭うというもの。

一種のお祓いですが、素敵だなぁと思っていました。

七夕で、朝露を利用するのを見たのはこの絵本が初めてです。

 

たんざくができると、切ってきた竹に、たんざくやおかざりを飾ります。

お飾りが竹だけじゃないのが感銘の深かったところで……!

 

七夕の節句と桃の節句の融合?

七夕に、流し雛のような、子どもが元気に育つような人形がついてくるのにすごく驚きました。

「七夕人形」は、長野県松本市の風俗として、文化遺産オンラインに登録されています。

重要有形民俗文化財の七夕人形があるようです。

お人形的なものは、桃の節句(3月3日、上巳の節句)でも端午の節句(5月5日、人形というより兜でしょうか?)でも出てきますが、七夕の節句で人形は珍しく思えてなりません。

ここの土地では、おひな祭りをどうしていたのか聞いてみたいですね……

さらに、とってきたお野菜をお供えして、豊作を祈ります。

収穫祭もまじっている感じがします。

「たなばたまつり」はすごく大きなお祭りなんですね。

 

七夕が「ぼんはじめ」

七日の朝にはお墓の掃除に行きます。

お盆の用意をするそうです。

旧暦の七夕ですし、そのまま、お盆につながる七日だったんでしょうね。

上のおそなえを見ても、お盆っぽい雰囲気を感じますよね。

 

「たなばたまつり」には提灯行列も

子どもたちが歌をうたいながら提灯行列。

町を練り歩くそうです。

お歌の内容が不思議です。

「たなばたさまよ たなばたさまよ

たなばたさまは むりなこと おっしゃる

つながば つなぐ つなげと おっしゃる

つなげば つなく せんりょうばこ

つながば つなぐ ほい ほい」

何か、豊かさにまつわる、お歌でしょうか……

 

最後は、水に流す

八日の朝、竹を橋の上から流します。

たんざくを結んだこよりも紙ですから、すべて、いずれ土にかえるのでしょう。

「たなばたさま、また らいねんも おいでなんしょ」

で締めくくられます。

 

五節句のひとつとしてのたなばたさま

ここにみられる「たなばたさま」は神様みたいなものなのでしょうか。

子どもを守ってくれて、ご先祖さまがやってくるお盆の先触れとなり、豊作も司る。

もともとは全国にあった七夕人形の風習が、松本地方では長く残り、今では江戸時代から300年続いた独特の文化になっている、というように紹介してあるサイトもあります

古い絵本ですが、豊かな原型を見た気持ちがして、新鮮でした。

商業化されていない、村のお祭りとしての七夕。

そういうのもあったんだよって、自分の子どものころのお祭りの話もふくめ、子どもと話してみるのもいいですよね。

 

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執筆者について

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本やムックの編集者、時々ライター、一般社団法人 日本マクロヘルス協会理事。3人の子を育てる高齢出産ワーキングマザー。編著に『子どもを守る自然な手当て』、企画・翻訳書に『小児科医が教える 親子にやさしい自然育児』『親子で楽しむ おむつなし育児』など。大人向けのノンフィクションや小説、実用書、児童文学、絵本など、多くの出版物を編集・製作中。趣味はマンガ読み。

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